「シュミテクト」「カムテクト」「ポリデント」「ポリグリップ」などの口腔ケア製品、「コンタック」「ボルタレン」等のOTC医薬品で知られるグラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン株式会社は、サステナビリティへの取り組みを強化する一環として、社内で使用した紙コップのリサイクルをスタートしました。その経緯やどんな効果があったのか、担当者の工藤遥大さんにお話を伺います。
目次
会社としてのサステナビリティ目標と
いち生活者としての意識のギャップを埋めたい
工藤:当社はグローバルコンシューマーヘルスケア企業であるイギリスのHaleon(ヘイリオン)の日本法人です。グローバル全体の方針としてサステナビリティへの取り組みを掲げており、当社日本法人としても強化したいという思いがありました。私は製品パッケージを開発するチームにおりますので、包装資材のプラスチック使用を減らすなど、仕事のなかでは推進してはいたものの、いち生活者として環境によいことをしているかというと、必ずしもそうではありませんでした。そんな中、当社も参加している海洋プラスチック問題に取り組む団体で、リサイクルをテーマに議論しており、そこに参加されていた三井物産パッケージングさんに、紙コップのリサイクルの実証実験についてご提案いただいたのです。
三井物産パッケージング 大池:その団体では分科会に分かれて様々なテーマで議論するのですが、私たちのワーキンググループは紙のリサイクルがテーマでした。日本では飲料用の紙コップの出荷量は年間約61億個というデータがあり、それらはリサイクルされずに焼却されているのです。なぜなら紙カップは飲み残しによる汚れがあるため、古紙のなかでも「禁忌品」に分類されており、リサイクルできないものとされているからです。ただ、汚れの状態に条件はあるものの、技術的にはリサイクル可能です。現在は回収ルート自体もないため、リサイクルの要望があっても持ち込み場所がないのですが、そのルートをうまく構築できれば、古紙リサイクルとしてかなりインパクトがあります。そういった背景があり、紙コップに焦点を当てたというわけです。
工藤:汚れといっても、油汚れではなくジュースやコーヒーです。軽く水でゆすぐことで簡単に落ちるんですね。そのひと手間だけで、大量に廃棄されていた紙コップが再資源化できるというのは驚きました。そもそも、これまで紙コップがリサイクルされているかどうか考えたこともなかったですし、リサイクルできないものだということ自体知りませんでした。
三井物産パッケージング 大池:今回のスキームは、まさにそのひと手間がポイントになります。オフィスに紙コップ回収専用ボックスを設置し、使用済みの紙コップを水でゆすいで入れます。そのボックスを配送会社に回収してもらい、協力業者へ配送、そこにストックしておきます。一定量溜まったら製紙メーカーの工場に送り、ダンボールの原料に作り替えるという流れです。
製紙メーカーの工場では、まず溶解設備で溶解し、古紙パルプにします。その後、ダンボール原紙製造設備で原紙に生まれ変わります。原紙はダンボール加工会社に送られ、新しいダンボールが誕生します。もとが紙コップであっても、品質には全く問題ないダンボールができるんですよ。
どうしたら協力してもらえるのか
ポスターや社内SNSでの発信に苦心
工藤:紙コップ回収の取り組みを始めるにあたり、まずは専用ボックスの設置から着手しました。また、従来の一般ごみのボックスもあえてそのまま残し、どちらに捨てるか選べるようにしました。というのも、ただ廃棄するのか、ひと手間かけてもリサイクルに回すのか、自分の意思で選んでもらうことが大切だと思ったからです。ただ再資源化できればよいのではなく、私たちの生活者としての意識を向上させたいというねらいが前提にあります。
三井物産パッケージング 大池:紙コップ専用ボックスは、飲み残しが入ったままだと入れにくいように、あえて紙製にしました。自然に抑止力が働くことを期待する仕様です。また、ボックスごとリサイクルできるという利便性も兼ねています。
工藤:設置したあとは社内アナウンスを行いました。ボックス周辺にポスターを掲示したり、メールや社内SNS、社内ディスプレイで告知をしたり。ただ、最初は回収率50%くらいでしたね。なかなか認知を得られず、苦戦しました。また、紙コップを洗う場合は、一度廊下に出て水道のある場所に行かなければならず、それも回収のネックになっていました。 あるときポスターの文言を「回収にご協力ください」から、「回収されるとダンボールになります」と変更したところ、回収率が上がったことがありました。ただの呼びかけよりも、自分のアクションがどういう結果につながるのかがわかることが重要なんだと学びましたね。それから社内SNSでの呼びかけも、「協力してください」というものから、「いつもご協力ありがとうございます」と繰り返し発信することで、アクションしてくれる人が増えていったのを実感しました。しばらくすると回収率は70%くらいまで上がり、半年以上経ったいまではほぼ100%回収できるようになりました。
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